2004年6月のご挨拶

今年も梅雨の季節がやってまいりました。毎年、入梅、梅雨明けの時期が早くなっているようですが、 今年はいつからりとした夏が来るのでしょう。ここ数年、夏は個人的な事情により、屋内で勉強をしなくてはならず、心底夏を楽しむことはできていないのです が、(今年も8月末までその予定ですが)それでも、雨の多い季節が一日も早く終わってくれるといいなと思います。(何しろ、車椅子は運転しながら傘をさせ ないので・・・)
そんな暗い話題だけではなく、6月といえば「ジューンブライド」、先日、オーケストラの後輩の結婚式にご招待いただきまし た。そういえばこのところ、旧友や後輩の結婚式にご招待いただくことが多くなってきました。今まで共にすごした親友や後輩の結婚式はまたひとつ取り残され たようなそんな一抹の寂しさもありますが、やはり、それぞれの人生の大切な一日となるおめでたい式にご招待いただけることは、この上なくうれしいことで す。新郎新婦の「その人らしい」人柄と真心のこもったおもてなし、ご両家の方々の心配りがあり、懐かしい友人との再会があり、そして何より幸せそうな(最 初少し緊張気味でしたがw)新郎新婦の笑顔がある本当に素敵な結婚式でした。披露宴でオーケストラの仲間と共に演奏する機会がありましたが、お二人に負け ないよう一拍一拍心を込めて振らせて頂きました。婚姻の女神で主神ゼウスのお妃であるヘラ(ギリシャ語でJuno)からきているといわれるジューンブライ ド。今頃ヨーロッパに新婚旅行中のお二人の末永い幸せを心より願っています。
今回の結婚式を経て改めて、音楽を提供する身として、コンサー トなど演奏の場で「おもてなしの心」を忘れてはならないように思いました。私はコンサートは、ただ楽譜を音楽にする場ではないと思います。単に今までの練 習の成果や演奏技術を聞かせる場でもないと思っています。コンサートは、一期一会でその場に集まった聴衆の皆さんに、「音楽」を聴いて楽しんでいただく場 であり、音楽をする者は(特にプロは)そこに力を注ぐことを忘れてはならないように思います。
 ここで申し上げているのは一般受けをするメジャー なプログラムを組む、有名演奏家を招くといった大衆迎合的なものではありません。(もちろんそういった企画も必要ですが・・)私は、今までの既成概念や習 慣に縛られるのではなく、「お客様により深く音楽を楽しんでいただきたい」という気持ち、信念をもって演奏する人・団体の個性、演奏環境、演奏する音楽の 特徴を十分に生かすことで、音楽をより魅力的に提供するよう努めていくことが重要なのだと思います。このことは一見当然のことのようですが、クラシック音 楽業界の現状を考えると、作曲も、演奏でも、そしてCD産業でも大変重要で奥が深い問題であるように思います。
私も演奏の規模を問わず、与えられたひとつひとつの機会に、自分ができる最善の音楽表現・音楽の提供の仕方を、模索し続けていきたいと思います。