東京都障害者総合スポーツセンター 「みんなのつどい」弦楽コンサート

日時2005年12月4日(日)11:00~11:40
場所東京都障害者総合スポーツセンター
指揮宮野谷 義傑
演奏曲カノン、「となりのトトロ」、クリスマスソングなど

北区王子にあります障害者スポーツセンターでの演奏依頼にお応えしての演奏会でした。この施設は、私が小学校、中学校、高校とずっと通っていた思い出深い場所です。ぜひともご期待に添えるよう精一杯演奏いたしました。

メ ンバーはMFL管弦楽団の弦メンバーとざま弦楽アンサンブルの弦メンバーの有志の皆さんでした。スケジュールの都合上、あまり練習の時間が取れない中での 演奏でしたが、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークやG線上のアリア、そしてとなりのトトロなど、ぬくもりのある音楽をお届けできたのではな いかと思っています。お客さんとの距離も大変近く(ちょっと近すぎ!?)、非常にアットホームなコンサートでした。

2005年12月のご挨拶

こんにちは。12月に入ってばたばたとしている間に、あっという間に年末になってしまいました。2005年ももうすぐ終わろうとしていますが、今月は本当に寒いですね!新潟のように雪が降らない分、文句を言ってはいけないような気がしますが、それでも寒いです。

先 日、NHKで町田市が中学2年生に4日間だけ社会を経験してもらうという取り組みを取材した番組を見ました。工作など物づくりに興味のある子は工場に、自 分の髪をいじることに興味のある子は美容院に、といった具合です。最初は大人と話すことに戸惑ったり、お客さんに挨拶ができなかったり、単純作業に辟易と しているのですが、時間が経つにつれて、働く大人が身近になっていくのと同時に、「プロ」の技術のすごさ、仕事への責任感を肌で感じるようになってくるの です。が近年は、汚職や耐震偽装など「大人のすごさ」より「大人の汚さ」ばかりが表に出てばかりですが、身近にいる大人たちはこんなにすごいんだ!と中学 生と一緒に感動してしまいました。仕事について、私たちはとかく効率や採算について語ることが多々ありますが、そうではなく、ひとつひとつ「きちんとする」ことが大切であることを感じました。音楽の世界も同じことがいえます。ピアニスト、ヴァイオリニスト、一流の音楽家はみな想像を超えるテクニックと音 楽性を持っています。しかし、音楽の世界、とくにクラシックの世界では、ごく一部の世界的な音楽家やオーケストラを除いて、なかなか採算を取ることができ ない現状にあります。この現状を打破するべく、年間に許容量以上のコンサートをしたり、無理な世界ツアーを組んだりということが行われています。

ですが、次世代に伝えていくべき音楽は、やはり「妥協のないきちんとした音楽」であるべきだと私は思います。最近再びY先生の指揮セミナーを受講していま す。「物事をきちんとする」ということがいかにシビアで、難しいかを痛感させられました。音と音のつながり、調性のつながり、楽器のバランス、全てをきち んと理解し、きちんと演奏者に伝えるということがどれほど難しいか、音楽をするということが決して甘くないということを再認識できた貴重な時間でした。次 世代に伝えていくことができる、きちんとした音楽、プロの技として誇れるような技術と感受性を今後も磨いていきたいと思います。

最後になりましたが、今年一年、お世話になりありがとうございました。今後とも自分を改革し続けたいと思いますので、2006年もどうぞ、宜しくお願いいたします。

2005年11月のご挨拶

こんにちは。11月になり、すっかり秋めいて涼しくなってきました。朝、晩はめっきり寒くなってき て、油断して上着を忘れると凍えてしまいそうになります。みなさんも風邪を引かないように十分注意してください。(10月の更新ができませんでした。申し 訳ございません。10月の挨拶はコラムに入っておりますので、宜しければお読みください。)

秋といえば、芸術、読書、スポーツとあります が、やはり、食欲の秋です。(指揮者が言い切ってしまっていいのか甚だ疑問ではありますが。。)最近のマイブームは「うどん」であります。もともと自他共 に認める「麺食い」で、ラーメン、そば、うどん、スパゲッティ、なんでも大好きだったのですが、今回は、食べるだけでなく、「打つ」楽しさに目覚めてしま いました。材料は小麦粉(中力粉)、塩と水のみ。実に簡単です。混ぜて、こねて、伸ばして、切るだけ。言葉でいうなら非常に簡単ですが、それぞれの過程が とても微妙で、毎回、歯ごたえ、口ざわりが違うものが出来上がるから不思議です。(そもそも、さらさらの粉がつるつるの麺に変身することさえ、いまだに不 思議です)どうしたら、もっと腰があるものができるか、太さはどれくらいがいいのか、工夫していく過程もとても楽しいものです。将来、引退したらうどん屋 さんをやろうかしら。(単純)

音楽も、私にとっては同じ喜びがあると思います。確かに、音楽はコンサートに行って演奏を聴くだけでも深い喜 びを味わうことができます。(時に心のこもっていない演奏に寂しい思いをする点でも、食事と似ていますね。。)ですが、やはり演奏の側にたつと、いっそう 音楽の奥深さが味わえるものだと思います。構成の緻密さ、ちょっとしたハーモニーの変化など聴いているだけでは気づくことのないさまざまな美しさ、面白さ に気づくことができます。そしてそれをどう表現していくか、テンポ、強弱、バランス、試行錯誤を積み重ねていく作業は実に楽しいものです。この過程を多く のメンバーと共有できることこそが、オーケストラの最大の醍醐味であるように思います。

音楽を聴くのは好きだけど、演奏はしたことないという皆さん、思い切って楽器を始めてみませんか?(歌でももちろんすばらしいと思います!)そして麺食いの皆さん、うどん作りに挑戦してみませんか?w(今度はそばにも挑戦したい!)

2005年10月のご挨拶

こんにちは。更新が遅くなってしまって申し訳ございません。一ヶ月遅れの更新をしばらく続けてまい りましたが、今回それも間に合わなくなってしまったので、今回10月のご挨拶は、日の目を見ることなく、コラムにお蔵入りとさせていただきます。別に大き く体調を崩しているというわけではございませんので、ご安心ください。

先日、ロッテがついに31年ぶりに優勝しました。ロッテファンの方、 おめでとうございます。私はヤクルトファンですが、ヤクルトも長い低迷期があり、久しぶりに日本一で優勝したときはとても嬉しかったものです。お祝い申し 上げます。万年Bクラスだった球団を就任二年目で優勝させてしまうバレンタイン監督の手腕には驚くばかりです。(95年に1年だけ監督をしたときも2位でしたし)

外国人監督である以上、言葉の問題もあるし、習慣も違うにもかかわらず、これだけの結果を残すバレンタインの秘訣はどこにあるので しょう。野球の戦術的なことはよくわかりませんが、大きな要素として彼の前向きで明るい人柄、そしてこぼれんばかりの「アメリカンスマイル」にあるように 思います。いままで、笑顔の印象的な野球監督っていたでしょうか?野村監督、森監督、王監督、星野監督、名監督といわれる彼らですが、(無論、笑顔はして いますが)あまり笑顔の似合う監督とはいえなさそうです。(ヤクルトにいた関根監督くらいのものです)日本の文化では真剣勝負の場に笑顔は不謹慎という伝 統が確かにあります。ですが、これからはリーダーの資質として笑顔は必要なのではないでしょうか。巨人の原監督、そしてわれらが古田監督、期待できそうで す!

海外の指揮者にも2通りいます。ムーティ、アーノンクール、マゼールはどちらかといえば無表情なタイプ(もともとの顔が怖いということ もあるとは思いますが)だと思います。冷静にきびきびと的確に音楽を進めていく印象がある一方で、私にはどうしても冷たい印象が残ります。表情豊かな指揮 者の代表格はやはりバーンスタインがあげられるでしょう。他にもラトル、クライバーなど生き生きとした笑顔が思い起こされます。(指揮者ではないですが、 ヨーヨーマの笑顔も素敵ですね)

もちろんどちらが正しいとはいえません。前述の指揮者はみな素晴らしい指揮者です。ですが、私の自身の好み として、怒ったような顔でカルメン前奏曲やブラ2の第4楽章を振ったり、しかめっ面でモーツァルトを振るのは、厳しく言えば「場違い」だと思います。と同 時に、「笑顔」は人間の集団を前向きに引っ張っていく重要な要素だと私は思います。素敵な笑顔のできる指揮者になりたいと私は思っています。

2005年9月のご挨拶

こんにちは。アメリカは大きなハリケーンに次々と襲われ大変なことになっています。カトリーナでは 1000人以上の死者が出てしまったという事実が、先進国アメリカで起こったということは、私には驚きでした。東京でも9月4日の夜の台風14号による大 雨はすさまじいものでした。ちょうど車で三鷹にいて、洪水の中をホバークラフトに乗ってるかのごとくでありました。

先日は、閉幕直前の愛・ 地球博へ0泊3日の強行スケジュールで行ってまいりました。つまり、往復は深夜バスなのです。(まだまだ私も若いものです。)連休の合間の平日にもかかわ らずすごい人出で、企業パビリオンに行くことはできませんでしたが、ヨーロッパを中心に海外各国のパビリオンを堪能してきました。

もうひと つ、9月、私には衝撃的な出来事がありました。それは、ウィーン音大助教授の湯浅勇治先生に教えていただく貴重な機会を得られたことでした。以前、大学を 出てすぐの頃、先生に教えていただこうと伺って、断られてしまったことがありました。プロを目指すものしか教えないと公言されている先生にとって、その当 時の私の甘さを一瞬で見抜かれたのだと思います。なので、今回、先生の前で棒を振ることができただけで、とても嬉しいことでした。

何回かコンサートを重ね、いろいろな先生に教わり、お褒めの言葉もいただいてきた自分は、湯浅先生にも力を認めていただけるのではないかという期待がありました。ですが、そんな思い上がった期待は、まさに瞬殺、一瞬で粉々になってしまいました。

「指揮は自分の音楽に対する感情を伝えるものだ」と考えてきた自分にとって、先生のお教えは天変地異、驚天動地、とてつもない革命でありました。「大前提とし て、音楽に感情移入はもってのほかである。頭は徹底的に冷静で、指揮者は感情論に走ってはいけない、どう演奏すべきかはすべて、楽譜に書いてある。」とい う先生のお言葉は最初、なかなか自分の中で消化できないものがありました。

ところが、1日8時間という体力と精神力勝負のグループレッスン (先生は妥協がなくとても厳しい。)を連日のように重ねていくたびに、先生のおっしゃることの深さがだんだん見えてきたのでした。音楽がどういう構成でで きているか、リズムの塊はどうか、和声はどう進行しているか、シンコペーション、ヘミオラはどう演奏するか、ちゃんと正確に理解すること(「ちゃんと正確 に」という言葉の意味がものすごく重いのです。)、そして楽譜に書かれている音、指示をどう演奏したら効果的に響くかを優先すべきだということ、とても当 たり前のことに、気づくことができたのです。先生は、今活躍している一流の指揮者でも、このことが達成されている人はごく僅かだとおっしゃっていました。 本当の意味で先生の言葉を自分のものにするのはまだまだ先のように思います。不足している知識、分析能力を補って、作曲家の意図する世界に近づけるよう、 これからも努力を重ねていきたいと思います。

2005年8月のご挨拶

早くも残暑の季節です。関東を直撃した台風一過で、今年も厳しい残暑になりそうです。8月の更新と いいながらも、8月も半ばを過ぎてしまいました。今年の夏は地震あり、ロンドンでのテロあり、政変ありとなかなか大変な夏でした。来月には選挙が控えてい ますね。(私は郵政民営化賛成であります。郵便貯金を国が勝手に高速道路につかってしまって、一部の官僚、国会議員が太るような制度はやめなくては!・・ 話が脱線しました。。)みなさんはどんな「夏」でしたか?

私は、先日、茨城県いわき市で、小林研一郎先生の指揮セミナーに行ってまいりました。たった二日間、人数も30名弱という大勢のグループレッスンではありましたが、現地のいわき交響楽団のみなさんのご協力をいただき、大変内容の濃い時間となりました。

小林研一郎(愛称コバケン)先生は、私がまだ大学在学中に北海道女満別で開かれていた指揮セミナーで、指揮棒の持ち方から指揮の基本を教えてくださった私の 原点とも言える先生です。そのセミナーの最終日、プロの弦楽四重奏を前にモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークの冒頭を振ったのですが、(その 瞬間が私の指揮者人生の最初の一振りでした)、先生は私の棒を見て、「棒に音楽が感じられる。」と力強く誉めて下さいました。その一言があったからこそ今 の私があるといっても過言ではないかもしれません。

以来、数年毎に、なにかにぶつかるたびに、先生に教わるべく、先生のパワーを身体で感じるべくセミナーに参加させていただいております。(毎年参加でなくてごめんなさい。不実な弟子です)。そして今回も大切な一言を頂きました。
そ れは「オーケストラの『気』を集める」ということです。舞台の上での指揮者は、実は舞台裏から出てきて指揮台の上で指揮棒を振り下ろすまでの瞬間で、ほと んどその人の実力が見えてしまうといいます。先生がおっしゃったのはその最後の部分、つまり指揮棒を振りあげる瞬間のことをおっしゃっています。何十人も のオーケストラを前に構えて、「さぁ、これから演奏するぞ・・・」という演奏者一人一人の「気」が充実して、指揮者の棒に集中するその瞬間を捕まえろとい うことなのです。無論、指揮者によってはその「気」を集めることが難しい人もいるでしょう。自分の中にオーケストラに負けないだけの音楽にぶつけられるエ ネルギーを持って指揮台に登ることが必須だと思います。そして互いの持つ「裂帛(れっぱく)の気(先生のお言葉)」が満ちる瞬間を全身の神経を集中して逃 さないこと、まさに指揮の真髄ともいえることを、先生は全力でで教えてくださいました。

言葉で言うのは簡単ですが、実際オケを前にすると非常に奥が深い感覚です。改めて、音楽の道を邁進する決意を新たにしたひと夏でした。

2005年7月のご挨拶

こんにちは。関東もついに梅雨明け、本格的な夏の到来です。さっそく蒸し暑い日が続いていますが皆 さんは夏ばてしていませんか?私は、「夏ばて」というより、「クーラーばて」しそうなくらい、クーラーと共に一夏を過ごしております。クーラーを発明して 下さった方に、足を向けて眠れません。

先日、東京学芸大学付属幼稚園でドラムの新保さんとピアノは当幼稚園の事務員の方で音大ご卒業の亀山 さんのピアノと共にクラリネットを吹く機会を頂きました。ここ数年、ソロでクラリネットを吹く機会があまりなかったため(オーケストラでもセカンドばかり ですしw)、前日までは緊張しましたが、いざ元気いっぱいの子供たちを目の前にすると、圧倒的な子供たちの元気、そして迫力のあるドラムの両方に負けない ように精一杯息を吹き込むことに夢中でした。目の前の小さな子供たちの心に、できるかぎり気持ちのこもった音楽を届けようと、ただひたすら必死に吹くばか りでした。「自分はそんながらじゃない」と思っていたのですが、子供たちを前にすると、自然と「歌のお兄さん」言葉になってしまう自分もなんだかおかし かったです。曲はジブリ映画とディズニーのテーマ曲を8曲とアンコールという少々長めの構成でしたが、自然と手拍子をしたり、大声で歌いだしたり、興味深 そうに身を乗り出してきたりと、子供たち一人一人がいろいろな反応をしてくれて、それを肌で感じることができて、とても楽しい時間でした。貴重な機会を下 さった新保さん、幼稚園の先生、そして保護者の皆様、ありがとうございました。

一般的に、ピアノ、ヴァイオリンなどの音楽の英才教育は、や はり5歳までには始めなければならないとよく言われます。絶対音感やリズム感が自然に形成される時期とも言われます。私の音感もその時に形成されたもので 両親には大変感謝しております。ですが、どうしてもその頃は集中力が持続しないため、ピアノやヴァイオリンのお稽古は辛くなってしまうものだと思います。 私はもっとも大切なのはその時期に、いろいろな「よい物」に触れることであるように思います。一見、難しすぎると思うようなことでも、子供は魅力溢れるも のにはとても敏感です。私の場合は小さいことからよく家で BGMにクラシックのレコードをかけていたことが良かったのではないかと母は申しております。(でも、その頃のピアノレッスンはやはり辛い面もあったので すが)そして、子供も大人と同じように、ひとりひとり興味を惹かれる対象がちがうものです。絵に興味を持つ子、歌に興味を持つ子、踊り、スポーツ、環境な どによって興味の対象はさまざまです。本当に「面白い」「楽しい」って思えるものに出会えた時、子供たちは無限の可能性を発揮するのだと思います。私のク ラリネットの演奏では残念ながらまだまだ力不足な面もありましたが、きらきらした子供たちの瞳を前にして、計り知れないほど大きな可能性に溢れた子供たち の心に、少しでも何か伝えられたら幸せだなと強く思いました。保育士の皆さん、毎日がたくさんの子供たちにエネルギーを注ぎ込んで本当に大変なお仕事だと 思いますが、たくさんの子供たちの人生に大きな影響を与えられる素晴らしい仕事、どうか頑張ってください。(私は帰った途端、ばったりと寝てしまいました w)

立川管弦楽団 第49回定期演奏会

日時2005年6月26日(日) 14:00開演
会場立川市市民会館(アミューたちかわ) 大ホール
演奏立川管弦楽団
独唱澤村翔子、針生美智子、川久保博史、宮本益光
指揮角 岳史
演奏曲目
  1. レハール/喜歌劇『メリーウィドウ』抜粋
  2. レハール/ワルツ『金と銀』
  3. ブルックナー/交響曲第6番イ長調
チケット1,000円(全席自由)

2005年6月のご挨拶

こんにちは。梅雨入りしじめじめした天気が続いておりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今 月もずいぶん更新が遅くなってしまいました。実は今月の話題、何にしようかずいぶん迷ったんです。郵政民営化、若貴の話、ワールドカップ出場決定、ロッテ 交流戦優勝、いろんなことが起きてますが(スポーツに話題が偏ってますね(汗)あ、イチローと野茂の話題も。。)この場で語るにはどうもぴんとこない今日 この頃でずいぶん悩んでしまいました。なので,今月は僭越ながら自分のことについて語ろうと思います。

私は実は、インタビューをするのがと ても好きな人間です。美容院に行ったら美容師さんに、入院したらお医者さんや看護婦さんに、タクシーに乗ったら運転手に寿司屋に行ったら寿司職人に、質問 するのがとても好きなのです。その業界の人間でしか知らないことを聞くことができたらとてもワクワクするじゃないですか。(美容師さんのはさみ、おいくら 位か興味ありません?w)でも、その時、一番楽しみにしている質問が「その仕事を始めたきっかけ」つまり、どうしてその仕事を選んだか、聞くことなんで す。その理由には、単に「給料がいいから」というようながっかりするような答えもありますが、逆にその人自身、その人の人生を集約したような答えが返って くることがあります。人生の中の決定的な出来事だったり、幼いころからの環境だったり、印象的な人との出会いだったり。そしてその原点は、その人自身の 「今」をささえているような気もするのです。

私が指揮を始めたのは、いろいろな要素があるように思います。幼いころからピアノを習い始めた こと、家では何気なく「運命」や「田園」などのクラシックのレコードがかかっていたこと、中学のとき、学年の合唱大会で指揮をつとめたこと、自分でも気づ かないような伏線がまだあるかもしれません。そんな自分だったからこそ、高校のときに出会ったバーンスタインの第9の演奏を授業で見て雷に打たれてしまっ たのでした。そのあとも小林研一郎先生にご指導いただく機会を得たり、身体中がしびれるような感動的なコンサートに出会ったり、素晴らしい演奏家の仲間に 恵まれたり。ほんとうに幸運の連続で今も指揮棒を持つことができている自分の運命、そして周囲の温かさに、今また感謝の気持ちでいっぱいになります。そし て、その感謝の気持ちをこれからも音楽に託していきたいと思います。

みなさんもたまには、自分の原点を見つめてみませんか?

2005年5月のご挨拶

こんにちは。今年は大型連休になったG.W.、いかがお過ごしになりましたでしょうか?私は、国際 フォーラムで行われたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン音楽祭2005を堪能しました。初日は当日券を買うのに2時間待ちという盛況ぶり。クラシック音 楽を気軽に楽しむ機会を求めている人はまだまだたくさんいらっしゃるという実感を持ちました。庄司紗矢香さんの演奏は今回もコンチェルト、ソナタともに歌 に溢れ、緊張感に満ちたすばらしい演奏でした。いつか演奏者側でこの音楽祭に参加したいという思いを強く持ちました。

今月の話題はやはり、 先月25日のJR西日本の福知山線脱線事故について書きたいと思います。連日のように、ニュースやワイドショーで報道を見るたびに、なんの前触れもなく突 然自らの人生を奪われること、そして大切な人を奪われることほど悲しいことはないのだと痛感しています。亡くなられた犠牲者の方々が歩んでこられた人生が 紹介され、お一人お一人が精一杯生きていらっしゃったのを知るたびに涙を抑えることができません。難病を克服し新たな人生を歩もうとしていた方、母子家庭 を懸命に守ろうとしていた方、定年後の夫婦そろって田舎暮らしを楽しみにしていた方。不幸にしてその電車に乗り合わせてしまった107名の人たちの思い、 そしてその人を大切に思っていた周囲の人の思いが一瞬にして砕け散ってしまったことが非常に残念です。
そして、私は今更ながらはっとさせら れました。普段何気なく電車で同じ車両に乗り合わせる人、ひとりひとりが深い人生の歴史を持っていることに気づいたのです。それは当然のことに違いないの ですが、それがいかに膨大で深遠であるかに改めて気づいたのです。うれしそうに話している人、うつむいている人、はにかみながら誰かにメールを送っている 人、疲れて眠っている人・・。外側からでは想像すらできない世界をひとりひとりが持っている、そして家族や友達、恋人、たくさんの人の思いがひとりひとり の存在に込められている。それはまるで宇宙の奥を覗き込むように深く、膨大な可能性に溢れていることのように思えるのです。

日常生活の中で はどうしても「自分」の日常に追われてしまいます。「自分」の思いが先にたってしまいます。大切な人の気持ちさえ、気づかず、自分の都合のために踏みに じってしまうことがあります。私はわがままな性分なのでしょうか、そういう面があると反省しています。何気なく同じ電車に乗り合わせた人々ひとりひとりが 深いストーリーを持っていることをいつも忘れず、お一人お一人に対して積み重ねてこられたであろう人生への敬意の気持ちと、その人の持つ可能性に思いを馳 せることこそが「思いやりを持つ」第一歩であると私は思います。その気持ちこそが、事故再発防止への道であるように思います。

たくさんの人に愛され、無限の可能性を秘めたまま突然未来を断たれてしまった107名の犠牲者の皆様に心よりご冥福をお祈り申し上げます。

ざま弦楽アンサンブル 第9回ふれあいコンサート

日時2005年4月24日(日)
場所ハーモニーホール座間 小ホール
指揮宮野谷 義傑
演奏曲
  1. ドヴォルザーク 弦楽セレナード
  2. コレルリ クリスマス協奏曲
  3. ポンキエルリ 「時の踊り」(森山 仁編曲)
  4. ドヴォルザーク 「ユーモレスク」(アンコール)

定期演奏会を年1回として最初のコンサート。ドヴォルザークの弦楽セレナードに約一年かけてじっくりと取りくみました。本番では想定していたより少し落ち着 いたテンポで響きやフレーズ作りを丁寧に仕上げられるようにした効果は出ていたように思います。特に大きな事故もなく、余裕を持って歌ってもらうことがで きたのではないかと思っています。

ポンキエルリは、弦楽合奏に鉄琴が加わるという楽しい試みでしたが、曲の持つ愛らしさをできる限り伝えら れたのではないかと思っています。コレルリの演奏もとても安定していて、温かみのある落ちついた演奏になっていたと思います。でも、一番特筆すべきはクイ ズ大会が盛り上がったことなのかもしれません。クイズの内容、司会ともに大変すばらしいものでした。勉強になりましたw

2005年4月のご挨拶

こんにちは、桜の花も一気に満開になって春到来です。あっという間に散ってしまってお花見シーズン も終わってしまいましたが、私たちが年に一回だけ、外でどんちゃん騒ぎをしても許される時期が短いのも寂しいものです。お月見とか雪見(あ、寒いか。)も 風情があるかもしれません。 先日、インドの方たちとお花見をする機会がありました。私はインドへ行ったことがないので、インドというと(1)カレー (2)映画大国(3)ズービン・メータ(指揮者)というイメージしかなかったのですが、今回、彼らと接してみてイメージが大きく変わりました。何しろ彼ら はとても歌がすきなのです。宗教上の理由からお酒を飲めない方がほとんどなのに、男性6人、桜の花の下でたくさん歌を歌ってくださいました。しらふでした が、恥ずかしがることもなく、大きな声で楽しそうに歌ってくださり、私たちの周りだけどこかアジアンな雰囲気になりました。世界一の映画大国のインドの映 画を見たとき、ストーリーとは関係なく、歌ったり踊ったりするシーンがあってとても不思議な感じがしましたが、彼らと接して納得してしまいました。どこの 家庭でも自然に歌を歌って、小さいころから歌うことが生活の一部になっているとのことでした。

お礼に日本人も何か日本の歌を歌おうというこ とになったのですが、ここで、私たち日本人グループは立ち往生してしまいました。日本の歌、何を歌えばいいのでしょう。お花見なので「さくら」や「荒城の 月」を歌ってみたのですが、途中から歌詞を忘れてしまって歌えません。童謡を大声で歌うのも寂しいものがあります。私は東京育ちなので民謡を知りません。 結局ヤクルトファンの私としては、「東京音頭」を歌うしかありませんでした。音楽をしているものとしては実に情けないと反省しています。異文化に触れて気 づくわが身でしたが、それにしても歌あり、お酒あり、笑顔ありの楽しいお花見でした。

先日、本屋で絵葉書コーナーがあり、ふらりと立ち寄っ ていろいろな日本の風景を眺めていました。桜、富士山、紫陽花、菜の花、五重塔、雪の金閣寺、改めて、日本は美しい国だと思い、この国に生まれてよかった と思いました。近年、とかく「愛国教育」が叫ばれています。私ももっと日本を愛するべきだと思います。しかし、それは「国歌の強要」などではなく、四季 折々の美しい日本の景色に気づき、日本の風土に根ざした民謡や踊りに触れたりすることで深めていくことが大切なのだと思います。それは自分の国を知ること によってだけでなく、他の文化に触れることで、より一層深まるのだと感じました。「愛国教育」も、異文化コミュニケーションの機会を増やすと共に、日本語 のやわらかさ、日本の歴史の力強さ、日本の文化の多様さを伝えて誇りに思えるような教育こそが「愛国教育」なのだと私は思います。

ということで、日本食好きの私も、異文化に触れるためにエスニック料理や中南米料理、アフリカ料理にも挑戦してみようと思います。さーて、今夜はどこの国の料理にしてみようかな~♪

2005年3月のご挨拶

こんにちは。三月になって、寒さも和らぎ、日差しも暖かくなってきました。と同時に、マスクをして いる人がだんだん増えてきて、いよいよ春を感じます。今年は立体型マスクが流通してきて、30倍の花粉量ということもあり、物々しさを感じます。かくいう 私も、先月のMFL管弦楽団のコンサートが終わった次の日から体調を崩してしまいました。(ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。ぜひぜ ひご感想をお聞かせください。)日に日に涙目、鼻水、頭痛と花粉症の症状が出てきて、ついに今年こそ「花粉症デビュー」かと思ったのですが、ここ数日回復 してきて、ほっとしています。こんなに毎年、多くの人が苦しむことが分かっているのなら、人がマスクするのではなく、日本全国の杉にマスクのようなものを かぶせるべきだと思うのは私だけでしょうか?

私事で恐縮ですが、(もともと私事のホームページではありますが)今月11日を持ちまして、私 は30歳になりました。子供の頃、なんとなく自分は長生きは出来なかろうと信じ、あまり遠い将来を考えず、その時その時、一年一年をなんとか切り抜けてき た自分が、積み重ねて30 年も生きてこられたこと、このことに改めて感謝をしたいと思います。自分を産み、全身全霊で育ててくれた両親、見守り支えてくれた親戚、友人、先生、お医 者さん、そして日常の中でさりげない優しさを下さった名前も知らない多くの方々。その全てがあればこその30年だったと思います。本当に幸せで恵まれてい た30年であったと思います。
30年を振り返ってみて、素晴らしい人と巡り合えたのと同様に、素晴らしい音楽にも巡り合えた自分の運命に感 謝をしています。聞いていた頃は心の支えになった音楽、癒しになる音楽でしたし、演奏するようになると、さらにコミュニケーションや美しいものへのこだわ り、自分の精神探求をももたらしてくれた音楽。新しい音楽との出会い、今まで聞きなれた音楽の新しい一面の発見。音楽は常に、自分を新しい世界へ連れて 行ってくれるように思います。

30年が自分の人生の半生だとしたら、後半は恩返しの半生にしなければならないと思います。素晴らしい人と出 会い、多くの力をもらってきました。壮大で深遠な音楽に出会い、安らぎと勇気、生きがいを見つけることが出来ました。そろそろ自分が多くの人たちに希望を 持っていただける存在にならなくてはと思うのですが、あまりの自分の未熟さ、浅さ、小ささに、ただただ不甲斐なさを感じるばかりです。今の自分にはあまり に大げさですが、それでも一歩ずつ、自分のレヴェルアップ、キャリアアップをはかり、自己満足でなく、オーケストラのメンバー、そしてお客様に深い感動を 持っていただけるよう、なにかしらの希望を感じていただける存在になれるよう、積極的に、勇気を持って、自分を開拓していこうと思います。

MFL管弦楽団 第4回定期演奏会「苦難を超えて」

日時2005年2月27日(日)
場所三鷹市芸術文化センター 風のホール
指揮宮野谷 義傑
演奏曲
  1. ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
  2. スメタナ 交響詩「わが祖国」より抜粋
今回はスメタナとベートーヴェン、二人の聴覚を失った作曲家を取り上げ、その絶望の中で書かれた音楽をご紹介していきました。どちらも逆境にあるからこそ、その音楽には「生きたい」「音楽で表現したい」という気持ちが強く現れているのだということがテーマでした。

実 は、MFL管弦楽団も大きな苦難の一年でした。致命的なほどの団員不足、出張や異動による休団、退団者がでるなど本当に厳しい状況下でしたが、コンサート ミストレスの柏木さんをはじめ、志しを持つ団員が地道に練習を重ね、音楽を作り上げてきました。最後は多くのエキストラの方にも支えられ、メンバーの一生 懸命な気持ちと、作曲者の熱い思いが一つになった良い演奏会が出来たと思っております。

メンバーがもっと充実し、より中身の充実した音楽作りが出来るよう、今後もオーケストラ共々、精進をしてまいりたいと思います。

2005年2月のご挨拶

こんにちは。今年もあっという間にもう一ヶ月が過ぎてしまいました。本格的に寒い日が続いていますが、梅や寒桜の花が咲いているのを見ると、春が近づいてることを感じます。
今 月27日に、1年をかけて準備をしてまいりましたMFL管弦楽団の第4回の定期演奏会があります。今回は音楽家にとって致命的とも言える「聴覚障害」に陥 りながらも、不屈の意志で作曲された音楽、ベートーヴェンの交響曲第5番≪運命≫とスメタナの交響詩≪わが祖国≫(抜粋)を演奏します。
コ ンサートでもお話しようと思っていることですが、ベートーヴェンの≪運命≫は、私にとって、小学校のときにレコードで聞いて以来、ずっと心の支えとなって いる大切な音楽です。ベートーヴェンがどんな人なのか、交響曲がなんなのか、オーケストラがどういうものか知らないときから、≪運命≫は、いじめ、挫折、 限界、さまざま壁にぶつかって絶望したときに、ともに苦しみ、嘆き、もがき、そして最後に希望、挑戦、生きる喜びに至らしてくれました。何度も何度も、私 の精神的危機を救ってくれました。
≪運命≫といえば、冒頭のタタタ・ターンが有名で、暗く深刻な音楽であると思われている方が多いかと思い ます。確かに第1楽章はそうですが、この音楽全体を見たとき、第1・2・3楽章という長い時間、自分の苦悩と真正面からぶつかり、全くの暗黒まで陥った中 から、一筋の希望の明かりを見出し、歓喜に至るその瞬間にこそ、この曲のすべてがこめられていると私は思います。静寂の中で自分の心を真正面から見据える 精神力、そしてそれまでの枠にとらわれず自分の思いをできる限り音楽に詰め込んだベートーヴェン。この音楽を私の人生の中で演奏する機会を得たことをとて も幸せに思っています。
静寂の中、自分の胸の中で故国への愛情をこめて描いたスメタナのわが祖国、そしてベートーヴェンの思いを体感しに、ぜひぜひ足をお運びください。ご来場を心よりお待ちしております。