2008年2月のご挨拶

MFL管弦楽団演奏会ちらし
こんにちは。最近雪が降って寒い日が続いていますが、皆さんはいかがお過ごしですか?去年のウィーンは暖冬で気温こそ東京よりも低かったのですが、 ほとんど雪は降りませんでした。家の中も不思議なくらい温かかったので、今年の冬の方が寒さを厳しく感じるような気がします。(ちなみに今年のウィーンは 相当寒いようです)

先月、とても悲しい知らせがありました。予備校時代の親友が突然亡くなってしまったという知らせでした。彼はエネルギー に満ちた笑顔と優しさが印象的な人で、大学受験、浪人時代をとても楽しい一年に変えてくれて、いつも励ましあった友人でした。勉強に集中しなくてはいけな い時期でしたが、時に恋愛相談だったり、いつも笑って過ごしていたような一年でした。

彼も音楽愛好者でパーカッションをずっとやっていて、 「いつか一緒の舞台でやろうな」と言っていましたが、大学、就職、年を重ねるごとにだんだん疎遠になってしまい、結局年に一度、連絡を取り合うか取り合わ ないかまでになってしまいました。共に音楽を楽しむ夢も叶わぬままになってしまいました。

お互いの人生があるから、それはある意味当然、か もしれません。でも今、私は彼と疎遠になってしまったことを悔やまずにはいられません。当時の楽しかった思い出を共に振り返ることも出来ず、今の心の悩み や愚痴を交わすこともなく、33歳の若さで突然永久の別れとなってしまったことが残念でなりません。どうしてもっと言葉を交わしておかなかったか悔やまれてなりません。

旧友はどこかできっと元気でやっている、そう勝手に信じて、互いの人生に交わるところがなくなると、離れてしまう。人生は互 いに違っても、孤独や葛藤、自己嫌悪と戦う人間同士、友人なら、どこかで接点を持ち続け、心を通わし続けていようと思いを新たにしました。その人にとって 自分がどれほど影響力を持つか自信はありません。自分の可能性を過信するつもりもありません。悲しいほど無力な自分がいることも事実です。それでも、心を 交わすことこそが互いに生きる意味であるような気がします。

今月10日はMFL管弦楽団のコンサートです。今回はベートーヴェンの力強い3 曲をとりあげる演奏者にとっても、聴く側にとっても、とてもエネルギーの要るプログラムです。ベートーヴェンの音楽は、周知の通り、ベートーヴェン自身、 病気や孤独、愛情、金銭、誇り、深く苦しみ葛藤、絶望を生き抜いた人間です。時を越え、私たちと共に苦しみ、共に喜ぶような、「いまを生きる」人間全ての 人へのエールこそが彼の音楽の本質だと思います。私はまだまだ、人間として、音楽家として、発展途上で未熟な身でおこがましいことではありますが、それで も、少しでもコンサートでいらした皆さんと彼の熱い思いやエネルギー、生きる力を共有することができたら、こんな嬉しいことはありません。

寒い中ではありますが、もしお時間がございましたらぜひお越しください。