2013年12月のご挨拶

2013年もあっという間に歳の瀬が迫って参りました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

師走の忙しさというのは20代の頃まであまり実感がなかったのですが(会社勤めしてる時期さえ・・)、このところ、歳を重ねるにつれ感じるようになってきました。日本人指揮者にとって12月の忙しさといえば「第九」ですが、まだまだ駆け出しの自分は第九ではなく、例年クリスマスコンサートを多くの方や団体のボランティアでのご協力を得て、障害者・障害児の施設等でさせて頂いています。

私は常々、「音楽」はもっと、必要としている人に届きやすくてもいいのではないかと思っています。音楽は、ストレスに疲れた心を癒し、人を笑顔にし、身体をも元気にしうるものだと思っています。誰もがストレスを抱えてるには違いないのですが、身体や心に障害を負って自由を奪われ、他に発散する手段のない方々にこそ、「音楽」は必要であると思います。

一方で、クラシック音楽は、「静かに聴く音楽」であるゆえに、障害が重く、どうしても声や音を発してしまう障害の方にとっては、生演奏は遠い存在になりがちです。最近、12月9日(障害者の日)など、どんな障害の方でも聴いて頂けるような素晴らしいコンサートが企画されるようになってきました。それでも、生演奏に触れる機会は健常者とは比べようもありません。

12月8日に多摩障害者スポーツセンターで20分強というごくわずかの時間でありましたが、利用者の皆さんと音楽を楽しむことの出来る時間をいただきました。弦楽の調べと一緒にクリスマスソングを歌う、リズムに合わせて鈴を鳴らす、身体を思いっきり動かす・・。終演後に多くの方から、いろんな世代の方から楽しかった、気持ちよかったと反響をいただきました。

今月はもう一回、クリスマスコンサートの機会をいただいています。精一杯頑張ろうと思います。

12月はもう一つ、オーケストラトウキョウとベートーヴェンの交響曲第2番とホルストのセントポール組曲の録音がありました。特に交響曲第2番はベートーヴェンが耳の疾患にけっして屈しないという決意の漲った素晴らしい音楽で、自分にとって「運命」と同じくらい大切な音楽です。


 今回も、オケの皆さんが、大変素晴らしい技術と集中力で支えてくださりました。仕上がりが楽しみです。

2013年、大阪への引越など、個人的には波乱万丈の一年でありました。と同時に、ベートーヴェンの交響曲の録音、そして多くのオーケストラの方々との出会いがあり、刺激と充実感のある一年にもなりました。偏に、支えてくださる皆様のお陰です。心より感謝を申し上げます。

新年を大阪で迎えるのは初めての経験です。2014年が、自分にとっても、そしてこれを読んでくださった皆様にとっても素晴らしい一年になりますように!

2013年11月のご挨拶

こんにちは、宮野谷です。11月を迎えて急に寒くなって冬の足音が聞こえてまいりました。皆様いかがお過ごしですか?

年末といえばクラシックの世界では「第9」です。指揮をしていると、年末に第九の仕事がないとどうも孤立感を禁じえないのですが、今年は11年以来2度目のかわさき市民第九コンサートにオケの下振りで関わらせて頂き、第九の音楽の難しさ(苦しさ!?)と喜びをオケの皆さんと共に味わうことが出来ています。

年末に第九のコンサートが目白押しになるのは日本だけですが、私は「苦悩を突き抜け歓喜に至れ!」という精神を年末に味わいたくなる日本人の魂に大いに共感を覚えます。皆さんの思いが結集して、素晴らしいコンサートになることを祈っております。(もちろん、第九に限らず、関わらせて頂いた全てのオケの本番の成功をいつも祈ってますよ!)

思えば、2013年はオーケストラトウキョウの皆さんとベートーヴェンの交響曲全曲録音に挑戦し、既に1番、4番、5番を録音しました。来月は2番を録音する予定です。ベートーヴェンの交響曲は自分にとって不思議なほど、どの曲も取り組むたびに新鮮な感動と、エネルギーを与えてくれます。小学校の頃、毎日のようにレコードで「運命」を聴いて勇気をもらい、巨匠バーンスタインの振った第九に雷に打たれて、指揮者を志した自分にとって、やはりベートーヴェンは永遠の憧れのような存在です。録音というのは実にシビアで反省点も多いのですが、それでも最善を尽くした結果ですので、出来上がった際には、ぜひお聴きいただければ幸いです。

最後に今月の写真ですが、第九の初演(1824年)から約10年後(1835年/天保5年)に生まれた福沢諭吉の生誕の地での一枚です。大阪の中ノ島にあります。諭吉さんは1万円紙幣でお見かけするので身近で実にありがたい存在でありながら、慶応義塾の創始者で文明開化に大きな影響を与えた思想家という程度にしか、彼の人生を知りませんでした。大阪に来て、縁あって福沢諭吉の生誕の地を訪れて、少し興味を持ち、彼の功績に賛否があるにせよ、クラシック音楽に携わる日本人として、忘れてはならない存在であることを改めて認識しました。「今」という時間は、気が遠くなるほどの多くの「過去」の人の思いが積み重なって支えられている、このことへの感謝を忘れてはならないと思います。それはひとりの人間の人生もそうですし、第九のような巨大な音楽のコンサートに似ているような気がします。





2013年10月のご挨拶


 こんにちは。10月も早半ばを過ぎての更新になってしまいました。先日、東京日野市の東光寺小学校で車椅子体験教室のお手伝いにうかがった際、去年植樹したクヌギの木を見に行って来ました。私の年賀状を受け取ってくださった方はご存知かと思いますが、植えたときは本当に枯れ枝のようにしか見えなかった小さなクヌギの木に、立派に!青い葉がついていました。陽の光をたっぷり浴びながら伸びやかに生きている小さなクヌギの木。生命力のたくましさを実感しました。

 先月は、自分にとってとても思い入れのあるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の レコーディングがありました。リハーサルが前2日の数時間のみという厳しい制限下ではありましたが、オーケストラトウキョウの皆さんの素晴らしい技術と集中力が結集して、自分にとって記念碑ともいえる録音になりました。まだまだ、人生も指揮者としても道半ばではありますが、それでも「今」を凝縮したような演奏になったかと思います。今まで事あるごとに、自分を鼓舞し続けてくれたベートーヴェンの音楽。彼がいかに精神を研ぎ澄まして、考えに考え抜いて作曲したか改めて悠久の時を超えて感じることが出来ました。録音が最終的に仕上がったら、皆様ぜひお聴きください。
http://mozartmodern.wix.com/orchestra-tokyo

  悠久の時を越えるべく、最後に写真をもう一枚。

 住んでいる大阪市都島区の住宅街のど真ん中に立つ信じ難いような巨木。大阪のガイドブックにもほとんど載ってませんが、渡辺綱の「駒繋ぎの樟」という史跡の木です。長徳年間(995~998)大江山の鬼退治で有名な源頼光が、この樟を植えたといわれています。何も知らずにこの道に差し掛かったときのこの樹のなんというオーラ、存在感!!(写真では伝わりにくいかなぁ・・)昭和の初め、大阪府の天然記念物の第一号に指定されていて、幹回り13m、高さ20mの大木であったそうです。残念ながら大阪大空襲で焼かれ今は立ち枯れになっているのですが、死んでいても弁慶の立ち往生のような威厳、風格。散歩で偶然発見し、圧倒されてしまいました。悠久の歴史を見守ってきた風格溢れる大木も本をただせば、私が植えたような小さな苗木だったかもしれません。焦らず、じっくりと、穏やかに、そして力強く、生きていきたいものです。


2013年9月のご挨拶

 やっとここ数日、日が暮れると涼しい風が心地よい季節になり、街路樹の上ではアオマツムシが賑やかに鳴きはじめ、いよいよ秋の足音が確かに感じられてまいりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか?

 私は幸い、最近、東京でお仕事のご縁を頂き、8月、9月と毎週、東京-大阪間を深夜バスで往復しています。大阪駅からバスに乗り込み、ひと寝入りして起きれば実家から徒歩10分内のバス停に到着・・。偏にバスの運転手の方々の夜を徹した安全運転のお陰なのですが、まるで隣町のように近く感じています。距離は近く感じても、そこは関東と関西。一晩寝るだけで言葉のイントネーションはまるで違うというのはなかなかに面白い体験です。人の優しさや人情は、日本人として共通の部分もありますが、やはり関西はパワフルです。

 先日、大阪ドームで阪神ーヤクルト戦を観戦し、まさにその圧倒的なパワーを目の当たりにする経験をしました。私のホームページを長年ご覧の方はよくご存知のことと思いますが、私は小学生の時からのヤクルトファンです。毎年数回神宮球場で、ヤクルトを応援しております。大阪ドームは甲子園球場に続く阪神の本拠地、かなりの少数派であることは覚悟の上で乗り込みました。が・・これほどまでとは。。!!!球場一面の黄色!阪神の攻撃中の大迫力の阪神の応援歌に対し、ヤクルト攻撃中の静寂の中か細く聞こえる応援歌。ジェット風船の大迫力。ゲーム結果も私の心も圧倒されて帰って来ました。ヤクルトはホームの神宮球場でも相手球団のファンが多いことがしばしば。。相手の地元なら完全四面楚歌。四面楚歌のなかでも、自分の持てる力を最大に発揮し、ベストを尽くす(今年は最下位ではありますが・・)。私事ではありますが、ますます、ヤクルト選手に敬意を覚え、応援したい心境になりました。

 私は幸い、これまでご縁をいただいた楽団は、プロオケ、アマオケ問わず、日本、海外問わずとても協力的なところばかりでしたので、指揮者として「四面楚歌」を体験してはおりません。ですが、その環境に甘えることなく、常にベストを尽くせるように心強くしていきたいと思います。



2013年8月のご挨拶

 今年の夏は暑い!喉もと過ぎれば・・とはよくいったもので、夏が来るたびに毎年こんなに暑かったかな・・と思ってしまいます。そして想像以上の関西の夏!もちろん週末帰る東京の夏も暑いのはよくよく知っていますが、関西の夏はさらに暑いんです。天気予報で表示される温度差以上に熱気・湿気を感じます。なかなか上手く表現できないけれど、じんわり身体に効いてくる暑さです。

 関西の夏は、祭りも熱い。日本3大祭りのうちの二つ、祇園祭と天神祭を楽しむことが出来ました。夜の祇園の街に浮かぶ山鉾の提灯、大川の川面に映る舟渡御のかがり火。獅子舞に、街を練り歩くだんじり。うーちましょ・・とはじまる大阪手締め。情緒溢れる日本の夏を味わうことができました。


 もうひとつ、関西はオーケストラだって熱い!と気づきはじめました。引っ越してきた当初は、街中で楽器を持っている人をあまり見かけず、アマオケは盛んではないのか、心配をしていました。何回かアマチュアオーケストラのコンサートを聴きに行って、不安は期待へと変わりました。確かに、東京と大阪の人口差があるように、オーケストラの数には差があります。でもそこは、少数精鋭!みなさんひとりひとり、熱い思い入れをもってオケに臨んでおられるように思いました。アマチュアでも英雄の生涯やストラヴィンスキーに取り組んで立派に演奏されている!その情熱に心動かされました。もちろん、プロオケも熱いです!大阪フィル&大植さんの定期演奏会、大変精度が高く、すみずみまで音楽が歌われていて、ザ シンフォニーホールの豊かな響きと合わせてとても感動的な演奏会でした。広上先生の振る京響のコンサートも今から楽しみです。

 ただひとつ、関西音楽界にぜひ取り入れていただきたいことがあります。それは車椅子席の割引です。学生席ならともかく、車椅子席に割引があるなんておかしいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。でもほとんどのホールが車椅子席はS席、もしくはA席(1階席一番後ろ)にしかないんです。ですから車椅子割引がないとどうしても値段が高い席でしか聴くことができない、そういう状況になってしまうわけです。障害のある人にこそ音楽を!ぜひとも関西のオーケストラの皆さん、車椅子席の割引導入、ご検討ください!

2013年7月のご挨拶

こんにちは。宮野谷です。大変突然ですが、7月の初旬に私的な事情により「大阪」に引越をしました。引越をした次の日から、関西にも本格的な夏がきて、強烈な日差しと暑さの中、初めての大阪暮らしをスタートさせることが出来ました。ホームページでお知りなった方、ご報告できずにすみませんでした。東京近郊での指揮活動は、これまでと全く変わらず、高速バスと国立の実家を利用しながらしっかりと続けて参りますので、今後ともどうぞこれまでと変わらぬお引き立てをどうぞよろしくお願いいたします。(深夜バス、寝てれば瞬間移動のようです!全身麻酔の手術と同じ、あっというまです・・笑)

引越は子供の頃から何回もしてきた私ですが、ウィーンでの留学生活以外、物心ついてから東京以外で生活をしたことがありませんでした。新天地での生活、引っ越すまではなかなかに勇気が要る事でしたがウィーンでの生活同様、楽しんでいきたいと思います。朝起きて聞こえるセミの鳴き声がまず違います・・(笑)クマゼミという西日本を中心に生息するセミのようです。(姿はまだ見てない・・)食事は、東京では考えられないくらい安い値段で美味しそうなお店がたくさんあります!地下鉄・JR・私鉄の駅にもエレベーター設置割合が多いように思います。(あとからの設置なので遠回りをしなくてはならないことが多いのですが・・)

ただ、東京と比べて、街の中で気になることがあります。東京に比べて楽器を持って歩いている人を見かけることが少ないことです。東京の近郊では、週末の電車ともなると、1輌に一人くらいは楽器を持った人がいるような気がします。たしかに東京のアマチュアオーケストラの数は驚くべきものがあります。あるアマオケの交流ページの登録数が東京都:395団体、東京都以外:622団体というデータを見たことがあります。やはり大阪では東京ほどは音楽が盛んではないのかと心配になったのですが、先日京都市芸の定期演奏会を聴きに、京都コンサートホールへ行って気持ちが変わりました。増井先生の下、学生の皆さんの一糸乱れぬ大変な熱演で感動しました。客席は大入り満員!クラシック音楽に対する熱意を肌で感じることが出来て、こちらでも活動できる機会を得たいという気持ちを新たにしました。

日々挑戦する気持ちと日々ベストを尽くす努力。言葉で言う事は簡単ですが、実践する事は実に難しいものです。しばらくは我慢の日々かもしれません。それでも大好きな音楽をオーケストラの皆さんと作り上げることが出来る幸せと感謝を忘れず、関東、関西に限らず、全国へ向けて、一歩ずつ音楽と人の輪を広げて参りたいと思います。

2013年6月のご挨拶

こんにちは。宮野谷です。6月に入り、いよいよ蒸し暑い日々がやってまいりました。今年は少雨が心配されているようですが、早くも台風の到来など、それなりに雨が降りそうです。車椅子の身にとっては雨はかなり憂鬱なもので、車椅子のハンドルの部分がどうしても滑ってしまい、普段の2倍近くの体力を消費してしまいます。でも、自然の中で雨には大きな恩恵を頂いている訳ですから、感謝しなきゃいけませんね!

今年のおみくじに「動かざる事山の如し」とあったのですが、いやはやどうして、自分にとってプライベートがこんなにも動きの忙しい年はありません。普段なら「早くも2013年も折り返しが近づいて来ました・・」と言いそうなところですが、自分にとってこの6ヶ月の実感は3年くらいに相当しそうな毎日を過ごしています。

そんな日々でついに先月の更新をスキップしてしまった・・と言い訳をさせていただいてるわけですが、音楽活動のほうは5月・6月と充実しています。皆様の多大なるご協力のおかげでついに手に入ったリフト付車椅子が活躍してくれています。皆様に力仕事で指揮台に上げていただいていたのが、自力で、その場に必要な目線まであげることができます。オーケストラのメンバーとのコミュニケーションがとても円滑になりました。もちろん自分で通常の高さに戻ることもできるので、休憩中にトイレに行く事も、演奏者のところへ行って個別にお話しすることも可能になりました。

音楽以外の部分でも大いに役立っています。自動販売機、コンビニのおにぎり、当たり前の様に自分で手に取れる。素晴らしい事です。スーパーで店員さんや近くの方にお願いしていました。一旦とってもらって、やっぱりやめた。。。ってことが出来にくかったりしたのですが、もうこれで大丈夫です。先日は電車の中ではじめて「吊り革」につかまってみました。健常者にとっては当たり前でも感動ものでしたw電車の中の景色も、車窓から見える景色もぜんぜん違うのです。ああ・・大人になるってもしかして景色が変わることで実感してるのかもしれないと、改めて思いました。自分ももっと大人にならなくては・・・(笑)

オーケストラトウキョウで、ベートーヴェン交響曲全曲録音第2弾として、交響曲第4番に挑戦しました。9曲の中で最もストレートに「喜び」「愛情」「生きる実感」が表現されている曲だと思います。物凄く難曲でオーケストラのメンバーの方々と一緒になって作り上げた音楽になりました。ぜひ公開を楽しみにしていてください。

2013年4月のご挨拶

 新しい年度に変わり、若葉の季節を迎え日々温かくなってまいりました。3月生まれのだからでしょうか、正月よりも新年度のほうがなんだかまた1年が始まる、そんな気がします。今住んでいる場所は中央線沿線とはいえ都心からは離れていて、豊かな自然が身近に残っています。新緑の季節は、少し外出するだけでとても気持ちのいい贅沢な気持ちになります。

 またちょっと外出すると思わぬ素敵な出会いがあったりします。私は中学生の頃から野鳥が好きだったのですが、当時野鳥図鑑でしかお目にかかれなかった憧れの鳥たちに出会えるのです。カワセミやエナガ、モズにヤマガラ、先日はなんとハヤブサにも出会ってしまいました。小さな鳥の愛らしさ、鷹などの鳥の引き締まった美しさ、それぞれに自然が生んだ魅力があります。そんな出会いは本当に幸せです。朝からシジュウカラのさえずりで目覚めるのは気持ちのいいものです。少し気持ちの塞いだ日でも、ウグイスのさえずりを聞くだけで嬉しくなります。クラシックの作曲家にもおおいに影響を与えたというのは分かる気がします。有名なところではベートーヴェンの田園、マーラーの巨人、メシアンやディーリアス、今取り組んでいるブルックナーの交響曲第4番にも、鳥の囀りがヒントになったといわれているテーマがあります。

 以前にウィーンに留学したときも、ハイリゲンシュタットの新緑や風に癒されていました。ウィーンの気候は東京より変わりやすい印象があります。温かい日差しに包まれたかと思うと、すっと雲によって暗くなったり、突然大粒の雨が降り出したかと思えば、雲間から再び日差しが差し込んだり。それはまさに音楽の流れと同じだ!と感じました。自然の悠久が時空を超えてベートーヴェンやモーツァルトと同じ体験をさせてくれたかのようでした。思えば「自然」と「人工の物」を区別したりしますが、所詮人間だって自然のごく一部にすぎません。どんな生き物も最後には土に帰るのです。だからこそ自然は、故郷のように知らず知らず、人にエネルギーをくれているのだと思うようになりました。

 最後に、皆さんに御礼を兼ねてご報告があります。多くの方のご協力やご声援をいただいておりました、リフト付車椅子申請の件、許可が下りる事となりました。また個別にお礼を申し上げさせていただきますが、この場でも御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。現在は発注をし納品待ちの状態です。ドイツ製の車椅子のため、細かい調整などがうまくいくのか、少々不安はありますが、新しい車椅子で皆さんの前に伺える日を楽しみにしております。

2013年3月のご挨拶

 こんにちは。3月も半ばを過ぎて、春の暖かさが日に日に実感できる季節になりました。そしてお蔭様で11日に、38歳の誕生日を迎えることが出来ました。お祝いのメッセージを下さった皆さま、ありがとうございました。少年のとき、15歳寿命説を勝手に信じていた自分が、その時の親の歳を超える38歳という歳をを迎えられたのは、相方、両親、先生方、音楽仲間や友人お一人お一人のおかげです。温かい笑顔と音楽に包まれ、幸せな日々を歩んでこられた事に心より感謝申し上げます。

 二年前のあの日から、私の誕生日が特別な日になってしまって、3月を迎える前からいろいろ思いをめぐらせておりました。音楽家が絶望の淵に自分は何をできるのか、障害者の自分になにができるのか、自分の存在に自信を喪失したときもあれます。一方で、それでもフランクルの「夜と霧」にあるように絶望的なときでも音楽は人の心を救うと確信し、音楽に取り組む事ができる自分に幸福を感じている自分もいます。しかし、そんな素晴らしい音楽の力をどれほど自分は引き出せているのか、それとも殺してしまっているのか、過去を振り返ると恐ろしく感じます。心の中の整理がつかず、なかなか自分の今の思いを言葉にするのは難しく、書いては消してを繰り返し、更新がここまで遅くなってしまった次第です。

 指揮者は一人では全く成り立たない仕事です。身を削りながら音楽を創り出してくれる作曲家、プロでも、アマチュアでもそれぞれの限られた時間と労力で築き上げた技術で臨んでくれる演奏者、通常その間に人は介在しないのですが、大勢で演奏する時のみ、そこに介在できるありがたい立場です。現場には様々な声があります。楽譜を通して、作曲家の声を聞き、指揮台に立てば、演奏者の皆さんの心の声が聞こえます。演奏者の皆さんの声はいろいろあります。時には厳しい声も聞こえます。でもそうした声を聞いて、自分の心にも耳を傾けながら、コミュニケーションを積み上げて一つの音楽を作り上げていく事が、自分にとって何よりも幸せです。

 40歳の足音が間近に聞こえてきました。少年のときの父、恩師と比べ、なんとも情けない自分の現状、体力の衰え、不惑に程遠い自分の精神に、焦りと孤独と自己嫌悪を覚え葛藤する日々です。とはいえ、どんなに嘆いても、自分の人生、自分の身体、自分の心です。より謙虚に皆さんの声に耳を傾け、地道に、どんな逆境も糧にして、いつの日か、絶望の淵にでも必要とされるような存在に近づきたいと思っております。


   

2013年2月のご挨拶

 こんにちは。ホームページ再開後初めての更新にもかかわらず、遅くなってしまいました。去年は体調管理に随分苦労した一年だったので、今年は健康第一!・・と思っていたのですが、早速、先月末突如として高熱が続き、1週間ほど入院生活をしておりました。

 日々の生活で忘れがちな、自分の健康への感謝、そして生きることへ患者も医者も看護師もまっすぐ向き合う病院という環境が「好き」と公言していた私ですが、今回は、高熱のためか、はたまた入院した病棟が北側で暗く隙間風に悩まされるほど猛烈に古かったためか、手術もなかったのに、気力を奪われてしまいました。(スタッフの皆さんは過酷な環境の中、真摯に頑張っていらっしゃいました。念のため。)

 その病院の病棟では3年後に建て替えるということが合言葉のように聞かれ、冷たい隙間風も早朝6時前にけたたましい騒音のなる暖房器具も「仕方がない」という諦めの空気が、患者にもスタッフにもありました。看護師の仮眠室の暖房器具もある時間になると騒音を出し、よく眠れない人もいるそうです。今までこの環境で頑張ってこられた方々にとっては、あとわずか3年で環境はがらりと変わるという大きな希望をもっておられる、それは理解できます。しかし、その環境を初めて知った私にとっては、あと3年も入院患者やスタッフは我慢を強いられるのか!というのは驚愕の事実でした。

 人は最後まで、その時におかれた状況を改善することを諦めてはいけないと今回、強く思いました。医者は患者の病状を、病院運営者は患者やスタッフの環境を、指揮者はオーケストラの音やアンサンブルを、そしてひとりの人は、自分や家族、周囲の人のよりよい人生に対して、多くの制限や困難、たとえ限界があろうとも、最後まで諦めてはならないと思うのです。これは大いに自分への反省でもあり、叱咤でもあります。意識してなにかを諦めてることは問題外ですが、問題は日常の慣れで無意識のうちに諦めてしまっていることです。自分を省みて、障害やその他の条件を言い訳に甘えたり、諦めたりしていることが多いのではないか、それは実に恐ろしいと我ながら思いました。


 おかげさまで、日々、体力、気力共に戻りつつあります。指揮台に立って皆さんのエネルギーと音楽のエネルギーに触れると、自然発火するように知らず知らず心が沸き立ちます。演奏者の皆さんと生き生きとした音楽を作る共同作業は実に幸せでありがたいことです。2月11日(祝)のコンサートも一期一会、メンデルスゾーン、モーツァルト、シューベルトの音楽を楽しんでいただけるよう、全力を尽くして頑張りたいと思います。もしお時間がございましたらぜひご来場ください。
http://www.miyanoya.com/2012/12/15.html

弦楽合奏と女性コーラスの集い ひな祭音楽会

日時 2013年3月2日(土) 13:30開演(13:00開場)
場所 高井戸高齢者活動支援センター 2階多目的室
曲目 ヘンデル 水上の音楽より「ホーンパイプ」
モーツァルト ディベルティメント第3番
ロジャース サウンド オブ ミュージックメドレー
      他
演奏 THE杉並ストリング アンサンブル
指揮 宮野谷 義傑 (弦楽合奏のみ)
チケット 無料 入場自由

MFL管弦楽団第15回定期演奏会

日時2013年2月11日(祝) 14:00開演(13:30開場)
場所狛江エコルマホール
曲目メンデルスゾーン 序曲「美しいメルジーネの物語」
モーツァルト 「フィガロの結婚」より抜粋
シューベルト 交響曲第4番ハ短調「悲劇的」
演奏MFL管弦楽団
ソリスト山下 尚子(ソプラノ)
指揮宮野谷 義傑(みやのや よしひで)
チケット一般:前売り900円/当日1000円
学生・障害者及び介助者:前売り450円/当日500円

開演前のプレコンサートもお楽しみに

2013年1月のご挨拶

2013年1月1日多摩平の森にて
新年明けましておめでとうございます。2013年の年明けと共に、2009年から4年間お休みしておりましたホームページを再開することに致しました。2003年のこのホームページ開始以来応援してくださっていた皆様、大変お待たせいたしました。

 音楽大学に3年在籍し、演奏活動や仕事を自粛し、勉強に専念した時間は、自分にとってなかなか厳しい時間でありました。これまでの自分を振り返って、自分は真摯に音楽に向き合えていたのか。自分の感性や信念にどれほどの根拠があったのか。指揮を振ることそのもの勘違いしてはいないだろうか。一つ一つの基本的な問いが自分に突き刺さり、時に、足元がぐらつき、握っていたものが砂が手から零れ落ちていくような感覚。音楽を演奏し表現することで得ていたカタルシスを自ら失い、現れては消える一縷の望みと否定の間で、浮いては沈みを繰り返す日々でした。

 苦しい日々でしたが、今振り返ると、音楽と向き合う上で欠かせない多くのヒントを得る事ができました。それが何かは、企業秘密で(笑)、細かにはお話できません。ただ申し上げられることは、それが「答え」ではなく、ヒントであるということです。1+1=2のように、こうすれば正解というような安易な「答え」など、そもそも音楽にはなく、学べるはずもないのです。それまでの経験から自分が「答え」だと信じていたものを一度否定し、新たに広い視野から得たヒントを糸口に、自分にいつも問いかけながら、楽譜や音楽を考えていきたいと思っています。

 もう一つ得たことは、音楽とオーケストラが好きということ、そして音楽はやはり偉大だという事です。この日々は自分が音楽を演奏したいというエネルギーを爆発せんばかりに溜め込む4年間でもありました。修了して徐々に活動を再開し、オーケストラの方々と一つのものを作っていく喜び、新たなオーケストラとご縁を得て、出会う人たちの豊かさ。そして作曲家が精魂こめて築き上げた音楽のなんという巨大さ。今、自分は幸せ者である実感を日々いただいております。

 今年も一つ一つの音楽との出会い、人との出会いを大切にし、全てのリハーサル、本番を力を尽くして取り組んで参りたいと思います。今後ともどうぞ宜しくお願い致します

ホームページ再開します


全てのデータは移行していませんが、新しい気持ちで始めたいと思います。

宮野谷 義傑