こんにちは、宮野谷です。11月を迎えて急に寒くなって冬の足音が聞こえてまいりました。皆様いかがお過ごしですか?
年末といえばクラシックの世界では「第9」です。指揮をしていると、年末に第九の仕事がないとどうも孤立感を禁じえないのですが、今年は11年以来2度目のかわさき市民第九コンサートにオケの下振りで関わらせて頂き、第九の音楽の難しさ(苦しさ!?)と喜びをオケの皆さんと共に味わうことが出来ています。
年末に第九のコンサートが目白押しになるのは日本だけですが、私は「苦悩を突き抜け歓喜に至れ!」という精神を年末に味わいたくなる日本人の魂に大いに共感を覚えます。皆さんの思いが結集して、素晴らしいコンサートになることを祈っております。(もちろん、第九に限らず、関わらせて頂いた全てのオケの本番の成功をいつも祈ってますよ!)
思えば、2013年はオーケストラトウキョウの皆さんとベートーヴェンの交響曲全曲録音に挑戦し、既に1番、4番、5番を録音しました。来月は2番を録音する予定です。ベートーヴェンの交響曲は自分にとって不思議なほど、どの曲も取り組むたびに新鮮な感動と、エネルギーを与えてくれます。小学校の頃、毎日のようにレコードで「運命」を聴いて勇気をもらい、巨匠バーンスタインの振った第九に雷に打たれて、指揮者を志した自分にとって、やはりベートーヴェンは永遠の憧れのような存在です。録音というのは実にシビアで反省点も多いのですが、それでも最善を尽くした結果ですので、出来上がった際には、ぜひお聴きいただければ幸いです。
最後に今月の写真ですが、第九の初演(1824年)から約10年後(1835年/天保5年)に生まれた福沢諭吉の生誕の地での一枚です。大阪の中ノ島にあります。諭吉さんは1万円紙幣でお見かけするので身近で実にありがたい存在でありながら、慶応義塾の創始者で文明開化に大きな影響を与えた思想家という程度にしか、彼の人生を知りませんでした。大阪に来て、縁あって福沢諭吉の生誕の地を訪れて、少し興味を持ち、彼の功績に賛否があるにせよ、クラシック音楽に携わる日本人として、忘れてはならない存在であることを改めて認識しました。「今」という時間は、気が遠くなるほどの多くの「過去」の人の思いが積み重なって支えられている、このことへの感謝を忘れてはならないと思います。それはひとりの人間の人生もそうですし、第九のような巨大な音楽のコンサートに似ているような気がします。