2019年9月のご挨拶

まず最初に、台風15号の影響で、停電、断水等の被害に合われ、今も苦しい環境に置かれている方々に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧、普段どおりの生活に戻られることを願ってやみません。去年9月、関西を直撃し想像を超える甚大な被害を出した台風21号を西宮で経験し、自然の威力の前に人間は成すすべもなくなることを実感したばかりです(私自身は幸い被害は受けませんでしたが)。今回、私は東京滞在中に台風に遭いましたが、乗るはずだった高速バスが運休になっただけで、幸い生活に影響はありませんでした。ですが、災害を受けるか受けないかは本当に紙一重、他人事ではありません。災害が毎年のように続く昨今の気候変動には大きな不安を感じます。電気、水、ガス、通信環境などのライフラインが欠けることは、特に私のように障害がある者にとって、命に関わることになりかねません。日常の環境を支えてくれる社会へ感謝を忘れず、いざというときの準備と覚悟が必要なのだと改めて実感しました。

思えば、2019年、令和元年も早いものでもう9月になりました。台風一過、日中はまだまだ暑いものの、朝晩は随分涼しくなり、虫の音も聞こえてきました。日に日に秋の訪れを感じます。芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋(ヤクルトファンの私にとっては今年は少々寂しいですが・・)、そして秋は鳥の渡りの季節です。

バードウォッチングといえば、先月は、日本野鳥の会本部で、来年、東京で行われるバリアフリー探鳥会にむけて「車椅子介助研修」の講師をさせていただきました。貴重な機会をくださった日本野鳥の会の皆様には改めてこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。

思えば小さい頃から車椅子生活で、車椅子の介助はずっと「していただく」立場の私が、「介助研修の講師」というのはなんだか不思議な気もします。ですが、自分がこれまで多くの方々に介助していただいた経験を通して、どういった場面が車椅子にとって大変なのか、そして介助の人にも、車椅子利用者にとっても、できる限り負担が少なく、より安全な介助とは何か、利用者の視点からお話することができました。

さらに参加者の皆さんに実際に車椅子に乗っていただき、車椅子はどんなことができて、どんなことが難しいのか、体験していただきました。道路のちょっとした傾きや、小さな段差、芝生の上など、普段気づかないようなものが意外に高いハードルであったりする反面、思ったより小回りがきいて、少し慣れてくると予想以上に動けるという感想を頂きました。
 
とかく障害を持つ者にとって、ただ単に「車椅子の人はかわいそう」と特別扱いをしたり、「なにかあったら困る」と無下に参加を拒まれてしまうことは大きな障壁になります。実は、車椅子でも出来ることはたくさんあります。目が見えない方、耳の聞こえない方もそうでない方の想像を超えて出来ることがあります。
確かに責任者の方のお気持ちを考えると、不安は理解できます。しかし思わぬ事故は小さいお子さんや、大人の方々でも起こりうることです。大切なことは、「何ができて何が難しいのか」、周囲の人が、そして社会が、その人の状態を把握すること、理解しようとすることにあると思います。もちろん障害のある人の側も状況に応じて、サポートして下さる方々の負担や配慮の大きさも理解することが必要だと思うのです。
お互いが知らないということが、最も大きな不安要因なのだと思います。バリアフリー探鳥会や車椅子研修を通して、様々な障害の世界がより身近に感じてもらえるような活動を続けてまいりたいと思っています。

最後に直近のコンサートのご案内をさせていただきます。
今月の14日(土)、14時から立川たましんRISURUホール小ホールにて、MFL第28回定期演奏会が行われます。ベートーヴェンとシューベルトの交響曲第1番を演奏いたします。同じ交響曲1番でもベートーヴェンは30歳、シューベルトは16歳のときの作品です。交響曲という分野は管弦楽の作曲家にとって最も大切な分野です。二人の輝かしい未来を象徴するような魅力あふれる音楽です。
是非、ご来場ください。
MFL第28回定期演奏会 詳細